「ずるいのは、十夜さんの方ですから。
ほら早く寝て下さい」


ポンポンと真っ白な布団を叩くと、十夜さんの着ていた執事服の上着がバサッと音を立てて椅子から落ちた。


「……個室で良かったですね」


「そうですね」


お互いぷっと吹き出して、その上着を拾おうと手を伸ばすと。


「これは、押し花?」


内側ポケットからはみ出ていたものに気がついた。


「あっ、それ……っ」


慌てる声が聞こえたけれど、なぜかその押し花が無性に気になって、ペラっと裏返した途端言葉に詰まる。


「よる、くんへ……?」


書いてあったその文字を口にした瞬間。


「もしかして……」


頭の中で小学生の、忘れていた記憶がやっと蘇った気がした。