昨日ガツンと私が言ったことや、キスしているところを見ていたことから、そろそろ限界がきて、今日辺りなにかことを起こすんじゃないかと。


だから出払ってる振りをして、男の気が緩んだ隙に一色さんが突撃すると。


「見られてたことに気づいてたんですか?」


「ええ。
いなくなった後もお店の近くでずっと」


「じゃ、じゃあ昨日のキスも、わざと見せつけるために?」


「はい。
そのつもりでいたんですけど、まさかお嬢様の方から頼んでもらえるとは思わず、びっくりしましたが……」


「っ!!」


「それにこれは血ではなくて、血のりです。この防刃チョッキも皇財閥の専用SPがつけているもので、今日だけ貸してもらうことにしたんです」


「これがどこまで持つかは分からなかったのですが、さすが皇財閥の製造品。背中にはさみがぶっ刺さっても痛くもかゆくもないです」


「じゃ、じゃあ、ほんとにどこも怪我してない……」


「はい。
私は普通に元気ですよ」


その優しい笑顔を見た瞬間。


「お嬢様っ!?」


慌てる声も気にならないくらい、また大粒の涙が頬を伝って。


「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした、お嬢様」


強く強く抱きしめられた。