お嬢様、今夜も溺愛いたします。



「私が、なんです?」


尚も上着のポケットでスマホが震える中、十夜さんはその先を促してくる。


「で、電話が……っ」


「そんなの後でいいです。
それよりもその先を教えて下さい」


鼻がぶつかりそうな距離まで顔を詰められて、逃がさないと言ってるのが強く伝わってくる。


「私が、なんです?」


漆黒の瞳が、期待の色で染まって。


「気になります、お嬢様」


「っ……」


するっと頬をなでられて、今にも唇が重なりそうになった時。


「黒木。お嬢様はおいでか」


低い声とともにコンコンと部屋がノックされた。


この声……


一色さん……?


「黒木?いるなら返事してくれ」


「………」



何やら急いでいるような声にため息をつきつつも渋々ベッドから降りる十夜さん。


名残惜しそうな手が再び頬をなでて、離れていった。


「どうした」


見れば案の定そこにいたのは一色さんで。

何やら渋い顔で十夜さん越しに私を見ていた。


「何かあったのか」


わざわざこの部屋に一色さんが来るなんて珍しい。十夜さんもただならぬ自体に険しい顔をする。


「確かお嬢様の元彼……志鷹と言いましたよね」


「はい、そうですが……」


その名前が出てきたことに心臓がドクンと嫌な音を立てた。


「お嬢様のご実家、花屋の方にその男が現れて」


「それで?」


みるみるうちに怖い顔になっていく十夜さんに、私の体は震え始める。



「お嬢様を出せと言っています」