お嬢様、今夜も溺愛いたします。


うそばっかり。

私と付き合った理由も、別れた後も。


楽しかったのは最初の頃だけ。


その最初だって、私の容姿しか見てなかったくせに。


あなたのせいでどれだけ私が苦しんだかも知らないで。


親も頼れる人もいない中、唯一信頼していた人にまで裏切られて。


あなたのせいでどれだけ自分を追い詰めることになったかも知らないで。


どんな気持ちで私が自殺しようと思ったかも知らないで。


「あなたみたいな最低男を、また名前で呼ぶわけないでしょっ!?」


「お嬢様っ!!」


後ろで十夜さんの呼ぶ声が聞こえたけれど、私はその場から全速力で走り出した。


「おっ、おかえり〜って……美都!?」


「美都ちゃん!?」


ぼろぼろ涙を零す私をギョッとした目で見る二人。


「ごめん、私帰る。
近くにSPの人がいると思うからその人たちに送ってもらうね」


早口でそれだけ言って、また私は走り出す。


「美都っ!!」


「美都ちゃんっ!!」



後ろで二人の呼ぶ声が聞こえたけれど、振り向かなかった。


なんでここにいるの。

なんで今更会いに来たの。


顔すら見たくもなかったのに。



「すみません……っ、私だけ先に帰ります」


近くにいたSPさんに声をかけて、リムジンに連れて行ってもらう。


「大丈夫ですかお嬢様」


心配そうな声が飛んできたけれど、涙がとまらなかった私は、俯いたまま何も言うことができなかった。