「十夜さんっ!
ありましたよ!抹茶クレープ!」
「はいはい、今行きますから」
焼きそば、ポップコーン、ポテト、チュロス。
さすが有名な大学だけあって、種類も豊富。
「んんっ、めちゃくちゃおいしそう〜!!」
クレープを手にすれば、すぐにルンルン気分になる。
「めちゃくちゃ嬉しそうですね」
「当たり前です!
抹茶は私の中では常に優先すべき順位ですから」
「その順位はもちろん、私が1番ですよね?」
「えっ?」
ツンっとほっぺたをつつかれて顔を上げれば、スっと目を細める十夜さんの姿が。
「お嬢様にとって私は、いないと息もできないほど大事な存在ですよね?」
「うっ、そっ、それは……」
「まさか抹茶以下だとはおっしゃいませんよね?」
「………」
「お、嬢、さ、ま?」
ひぃぃぃーーーっ!!
こわっ!
「抹茶にまで嫉妬しないでください!」
「しょうがないじゃないですか、お嬢様が私を1番だとおっしゃらないので」
「だからって………!」
そんな会話をしていた時だった。
「美都……?」
「っ!!」
背筋が凍って、足が固まる。
この、声は……
「久しぶり、美都。
今は皇財閥のお嬢様、かな?」
ずっと憎くて仕方なかった人。
私が1番つらいとき、苦しい時。
死のドン底まで私を突き落とした人。
「志鷹、くん……」
固まる私の前で志鷹くんは、にっこり笑って私を見ていた。