ほとんど人がいないところまで来たところで、
「お嬢様」
どこかの教室の中へ誘導され、ポスンと収まる私の体。
「十夜さん!
ここが大学ってこと忘れてませんっ!?」
いくら空き教室だからって、人が来ないとも限らない。
「忘れてませんよ。
それにここ、授業で使われることはほとんどない棟なんです。だから、平気です」
「そういうことじゃなくてっ!」
ますます強く抱きしめて、はぁっと深く息を吐いた。
「なら、どういう問題ですか?
お嬢様とこうしてふたりになれて嬉しいのは、私だけですか?」
「っ!」
悲しげにつぶやかれたその声に、胸の奥がぎゅーとなる。
「お嬢様がすぐそばにおられるのに、ずっとさわれないなんて苦痛でしかありませんでした。しかも一色とも仲良さげに話してましたよね」
「そ、それは十夜さんの話をしてただけで……」
包むように抱きしめられ、心臓が一気にドキドキと加速する。
「分かってます。
それでも、お嬢様が他の男と話してるってだけで気が狂いそうになるんです」
すると十夜さんは一瞬私から離れ、ガチャンと内側から鍵を閉めた。
「な、なんで鍵を……」
「もちろん、邪魔者が入ってこないようにするためですよ」
そして、ストンと近くにあった椅子に腰かける。
「お嬢様、こちらへ座っていただけますか」
「こちらへ、とは?」
「私の膝の上」



