「………」
頬杖をついて、ムスッとする紗姫。
もしかして、妬いてる?
「それはそうと、やっぱ黒木の人気は尋常じゃないな」
「うん………」
十夜さんが通る度に至る所で上がる黄色い悲鳴。
他にもかっこいい執事さんはたくさんいるのに、どの子も目をハートにさせて十夜さんを見ている。
そりゃあ、そうだよ。
「あんなにかっこいいんだもん……」
お屋敷で見るようなシンプルな黒の執事服じゃなくて、今日はワインレッドのタキシード。
加えていつもよりとんがったレースアップシューズ。
目が隠れるほど前髪を下ろしてるせいか、いつもより眼差しも鋭くて、目が合う度にドキッとする。
あんなにかっこいい姿、誰にも見せたくなかったな……なんて。
見たいと思ったのは自分のくせに、胸の奥がぎゅっと鷲掴みされたように苦しくなる。



