お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「あれ、それどうしたの?」


佐藤さんが去った後、一段落ついたらしい二人がやって来た。


「ああ、うん。
ちょっとね」


白いガーベラが映えるようにと、全体的に優しい色でまとめたアレンジメント。


「なんだか、お嬢様らしいアレンジメントですね」


「そ、そうですか?」


「はい。優しくて、穏やかで。
でも可愛らしさも十分あって」


「っ!!」


目を細めてこれでもかと優しく微笑む。


「おい。なに口説いてんの?
俺いんだけど?」


「おや、いらっしゃったのですね八神様」


「さっきからずっといたわ!
この腹黒執事っ!!」


「なんとでもどうぞ」


流し目で私を見つめる十夜さん。

そこには愛おしいと言わんばかりに甘すぎる色が浮かんでいて。


「ほんっとずるいですね、十夜さんは」

「お嬢様に言われたくはありません」


顔を見合わせてお互いぷっと吹き出した。


「いい香り……」


秋晴れの空の下、お店に並ぶ花たちがそよそよと風に揺れる。


私の手の中にはまるで応援でもするかのように、白くて美しいガーベラが瑞々しく咲いていた。