お嬢様、今夜も溺愛いたします。



「じゃあそれは美都ちゃんに」


「え……?」


笑顔で差し出そうとすると、佐藤さんにやんわりとめられた。


「美都ちゃん、白のガーベラの花言葉は知ってる?」


「確か、希望……ガーベラ全般は常に前進、だったような」


「その通り。
ご両親を亡くされて色々つらい思いをしたと思うけど、美都ちゃんなら大丈夫よ。こんなに素敵な花に囲まれて、大切に一途に思ってくれる人やお友達と出会えたのだから」


ちらりと目を向けた先には、なにやら言い合いをしながらもどこか楽しそうに作業を進める十夜さんと紗姫の姿。


「そうですね」


一時は死まで考えるほど絶望の縁に立たされた。

けれど今は違う。


生きる意味も、自分の存在や価値を認めてくれる人がちゃんといる。


そばにいるから。


「頑張ってね、美都ちゃん」


はいっと両手の手のひらの上に渡されたのは、さっき私がアレンジメントをしたガーベラ。


「きっとあの子とはうまくいく。私が保証するわ。一度挫折しても、それでも立ち上がることができた美都ちゃんなら絶対幸せになれるから」


「佐藤、さん……」


ふと目元が熱くなって、俯いた。


私の周りの人たちはみんな、あたたかくて優しい人ばっかりだ。

こんな人たちに囲まれて、私はこれ以上にないほど幸せで。


「ふふっ、今日はそれだけを言いたくて来たの。
今度はちゃんと、お客さんとして来るわ」


じゃあ、また。

そして最後にまた昔みたいに、頭をなでてくれた佐藤さん。


「ありがとうございます、佐藤さん……」


私やっと、十夜さんにつながる糸口を見つけられた気がします。