「知ってるんですか?十夜さんのこと……」
十夜さんを見る目が他人事のようには見えない。
まるで孫にでも向けるような、とびきり穏やかな眼差しだった。
「ええ。
私、9年前に旦那を亡くしてるのだけど、その時にちょっとね」
「ちょっと?」
「ええ。
私の旦那、美都ちゃんのお母さんが勤めてらした病院に入院していて、お見舞いの際にたまに話してたのよ」
「十夜、さんと?」
「ええ。
病室が同じだったから」
病室……
バラバラになっていたピースが一つ組み合わさった気がした。
前に十夜さんの言った言葉。
『私もよく美里様に看てもらってましたから』
じゃあ十夜さんは、小さい頃にお母さんが勤めてた病院に入院してたから、お母さんを知ってたってこと?
お父さんもよく、病院の方へ頼まれたお花を配達していた。
そこでお父さんとお母さんは知り合って結婚したって聞いてたから。
その時にお父さんとも面識が……



