「お呼びでしょうか、お客様」
呼ばれた方へ行けば、今の時期にぴったりの白のガーベラを見る年配の女性がいた。
「大きくなったわね、美都ちゃん」
「え?」
「覚えてないかしら?
美都ちゃんが小さい頃、よくこのお店に来ていたのだけれど。美都ちゃんが中学生になる頃にはもう来ることはなくなったのだけど、懐かしいわ」
穏やかに細められた目元。
白髪は多いけれど、とても若く見える綺麗な顔立ち。
長いロングスカート。
『こんにちは、美都ちゃん』
小学生の頃、1週間に1回は必ずうちの店に足を運んでいた常連さん。
「もしかして……佐藤さん、ですか?
この近所にお住まいの」
「ふふっ!
やっと思い出してくれた?」
あの頃から変わってない優しい笑顔。
『今日もお手伝いご苦労さま』
頭をなでてくれたあたたかい手。
「はいっ!
お久しぶりです」
学校が忙しくなった中学の頃はほとんどお店を手伝うことはなくなったけど、小学生の時はよく顔を合わせていたっけ。
うちの両親のお通夜やお葬式にも足を運んでくれた1人。
「ご両親が亡くなられてこのお店ももう閉めちゃうのかと思ってたけど。店長さんがまた、開いてくれたのね」
ちらりと十夜さんを見つめる佐藤さん。
その目は懐かしの色が見え隠れしているようで。



