十夜さんからゆっくり離れ、コテンと首をかたげてみる。
うっと十夜さんは言葉に詰まったけれど、だめですの一点張り。
「私、十夜さんの執事姿見たいです」
「普段いくらでも見れるじゃないですか。
それにその時の衣装なら私が買ってお嬢様の前で着ますから」
「それでも行きたいんです」
「お嬢様ー」
グリグリと額を肩に当てられて、やめてくれって言われてるのが伝わってくる。
でもどうしても見たい。
十夜さんはもちろん、界さんや一色さん、それに月菜さんも。
「そこに行ったらすぐに帰りますから!
それならいいでしょう?ねっ?」
「うーん……」
これでもだめ?
それなら……
「十夜さん、ちょっと屈んでもらえますか」
「お嬢様?」
不思議な顔をしつつも、その通り屈んでくれた十夜さん。
私は決意が揺らがないうちにと行動に移す。
「これでも、だめ……ですかっ?」
「っ〜!!」
グイッとネクタイを引っ張り、ちゅっと頬に口づけた私。
どうにでもなれ!とキスしたものの、なんとも恥ずかしくていたたまれない。
「ここまでしていただけたのなら仕方ないですね……」
「やった!」
顔を赤くしていた十夜さんだったけど、次の瞬間にはもう満面の笑みを貼りつけていた。
「もう一度。
今度は口にしていただけたら、行くのを許します」
なんて悪魔的お願いをしてきたけど、負けるもんか!と私はキスをした。
「敵いませんね、お嬢様には」
その後何倍返しにもされたのは言うまでもない。



