「はーっ、楽しかった!
改めて礼を言うのもなんだけど、ありがとう黒木」
「どういたしまして」
時刻は午後7時。
辺りはどっぷり闇に包まれ、オープン初日は大盛況に終わった。
「お疲れ様!」
「界!」
「界さん!」
そろそろ迎えが来る頃だと紗姫が言った途端、お店の前に場違いなほどでかいリムジンがでーんと止まり、中から真っ白のニットにピンクのロングスカートを履いた界さんが出てきた。
「なんか楽しそうでいいなぁ〜
私もここでバイトしようかしら」
「界は執事以外にも2つバイト掛け持ちしてるだろ。それ以上したら体壊す」
「あのツンデレ紗姫ちゃんが心配してくれてる!?
ぎゅっとしていい?」
「それは勘弁」
ふふっ、やっぱり仲いいなぁこの2人。
微笑ましいやり取りを見ていてハッとする。
「界さん、紗姫から聞きました。
リップグロス、本当にありがとうございます!」
お礼を言いに行くと、界さんは驚いた顔をしたけれど、またすぐにとびきり優しい笑顔を向けてくれた。
「ふふっ、喜んでもらえたなら良かったわ。
十夜も」
「えっ?」
どうしてここで十夜さん?
「黒木がどうかしたのか?」
頭の上にハテナを浮かべる紗姫と私を見て、界さんはなんでもないわと笑うだけ。
「十夜、これから紗姫ちゃんのことよろしくね」
「はいはい」
ちょうど片づけを終えた十夜さんが戻ってきた。
「美都ちゃん、あのリップグロス、十夜とふたりの時につけてみてね」
バチーンとウインクをして、怪訝な表情の紗姫を引っ張り帰っていく界さん。
「どうかされました?お嬢様」
「あっ、い、いえ、なにも……」
なぜにふたりの時?
私の頭の上にはますますハテナマークが浮くばかりだった。



