お嬢様、今夜も溺愛いたします。

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「まさかまた、このお店の開いた姿を見ることになるなんて思いもしませんでした」


おじいちゃんが去った後、十夜さんとふたりお店の中を見て回った。


「お嬢様の居場所は私が守ります。お嬢様の喜ぶ姿を見るためならなんだって実現させます」


「十、夜さん……」


優しい指がそっと下まぶたにあてられた。

ここまでしてくれたことが、本当に嬉しくて幸せで。


「っ、お嬢様?」


ありがとうって気持ちを存分に伝えたくて、ぎゅっと広い胸に抱きついた。


「……いつのことですか」


「え?」


「十夜さんと私が会ったのって」


小さい頃。

それはいつのことを言うんだろう。


私と十夜さんとじゃ4歳も離れてる。


中学はもちろん、高校だって一緒にならない。

だったら、それ以前。

小学校の時ってことになる。


だけどまったく記憶がない。

男の子と話す機会なんて、教室以外じゃほとんどなかったし、幼なじみなんて子もいなかった。


ぎゅっと腕を背中に回したまま、十夜さんを見上げる。


気になる、教えてほしい。

そんな思いを込めて。


じっと十夜さんを見つめていたら、なぜかふいっと顔を逸らされた。


「……めちゃくちゃ可愛いお願いの仕方ですけど、今はまだ教えられません」