お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「え……」


「歩道橋で会った時、お嬢様は私を初対面だとおっしゃられましたが」


自嘲気味に笑うと、頭をそっとなでられる。


そっか。

だからあの時。


私が初対面だって言った時、悲しそうにしてたんだ。


私は昔、十夜さんと会ってる……?


いつ?どこで……


「なのでお嬢様のご両親、圭人様や美里様とお会いしたことも何度もあります」


やばい。

頭の整理が追いつかない。


私とは昔会ってたから、お父さんやお母さんのことも知ってたの?


「ですが亡くなられたことを聞いたのはしばらく経った後でした。お二人とは子供の頃以来お会いしてませんでしたし、連絡先も知りませんでした」


子供の頃に……?


「だからお嬢様が命を絶とうとした時は本当に驚きました。その反面、本当に自分が情けなかったのです。そこまでするくらいお嬢様は追い詰められていたのに、そばにいることはもちろん、SOSにも気づかなかった自分が」


「十、夜さん……」


苦しそうに顔を歪めながらも、私から目を離すことは決してなかった。