とめどなく溢れる涙もそのままに2人を見れば、おじいちゃんが優しい声で教えてくれた。
「美都がうちに来て、ここに戻ることはこの先ないだろうと思っていた。いくら自分が育った家とはいえ、お店を見れば両親のことを思い出してつらい思いを何度もするだろうから」
切なげに笑いながらおじいちゃんは続ける。
「だけどそんな時、黒木がわしに言ったんじゃ」
「え……?」
やれやれとため息をつきながらも、とても優しい顔をして。
「美都が家族と過ごした大切な場所で、大好きな花がたくさんあるからってな。自分が先頭に立って動くから、もう一度この店を開くことはできないかとな」
「う、そ……っ」
ゆっくりゆっくり十夜さんを見れば、照れくさそうにでも私をまっすぐ見ていた。
「経営学を学んでいる身であることと、美都のためにどうしてもと何度も頭を下げに来たから、OKしたんじゃ」
「どうして、そこまでして……」
大学生で、私の執事というバイトもして。
時間なんか限られてるはずなのに。
自由な時間なんてほぼないはずなのに、どうして……
「ご両親を亡くされて1番つらい時、私はおそばについてあげられませんでした。お嬢様が誰よりも助けを求めていたのに」
「で、でも十夜さんは私の家の事情を知らなくて当然で……」
皇家の執事になったのは私がお屋敷に来る2日前だ。
そもそも苗字も違う、おじいちゃんと一緒にも住んでない私の事情を十夜さんが知るはずが……
「私は、昔お嬢様と会っています」



