お嬢様、今夜も溺愛いたします。



ドーーーーン!!!

大きな音がしたかと思うと、夜空いっぱいに咲き誇る大輪の花。


「花、火っ……?」


口をパクパクさせて驚く私に、十夜さんはまだまだと微笑む。


そして。


「ハッピーバースデー……」


英語で書かれたその花火の文字をゆっくり口にした私。


「ま、まさか……っ」


「お誕生日、おめでとうございますお嬢様」


10月23日。

今日、私の誕生日だ……


「もしかして今日のデートって……」


「はい。
看病してくださったお礼も兼ねてますが、メインはこちらです。大切なお嬢様のお誕生日ですので、この日のためにと色々準備して参りました」


目を細めて優しく微笑む十夜さんに、言葉が出なくなる。


プレゼントだって言ってたあのドレスも、このために……


「っ……」



両親を亡くして、大好きな人もいなくなって。

頼れる人が誰もいない、ひとりぼっちの世界で。


誕生日なんて、どうでもいい。

私の誕生日なんて誰も気にしない。


そんな思いからいつの間にか忘れてしまっていたのに。


「誕生日おめでとう、美都」

「おじい、ちゃん……?」


十夜さんの後ろから現れた大好きな姿。