お嬢様、今夜も溺愛いたします。

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それからやってきたのは。


「お手をどうぞ、お嬢様」


「ありがとうございます。
ここは?」


「入ってからのお楽しみです」


さあさあと背中を優しく押され、誘導されるままに歩いていく。


何階まであるんだろ、このホテル……

見上げても最上階が見えないほど、高い。


ラウンジに入って、エレベーターに乗る。


押したのはなんと最上階のボタン。


首を傾げる私に、十夜さんはなにも言わず微笑むばかり。


チンっと音がして、扉が開く。


「着きましたよ、お嬢様」


そしてエレベーターをゆっくり降りた途端。


「え……」


目の前に広がる光景に、開いた口が塞がらなかった。


「きれい……っ」


ガラス張りの向こうに見えるのは、夜景。

なにがすごいって、迫力が尋常じゃない。


「この建物は皇財閥のものなのですが、この土地に立つビルの中では群を抜いて高いんですよ」


そう。


あまりに高いそのせいで。

ビルも街も、走る車も。

色とりどりのライトが暗闇を照らして、まるで夜空に輝く星々のようで。


自分が天空にいるような気分になって、街に広がる景色すべてが星の海に見えて。


「驚くのはまだ早いですよ」


その瞬間。