「大丈夫ですよ。可愛いなーくらいには思いましたけど、別に引いたりしてないです。寧ろ、役得と言いますか……」


「そ、そうですか?」


十夜さん、今めちゃくちゃ素っ頓狂な声出なかった?

男の人はあまり可愛いとか言われても嬉しくないのかも。


それよりも、十夜さんがベッドに横になってる姿を見て、なにか違和感を感じたんだよね。


ベッドサイドで座って、時々汗を拭いたりしてたんだけど、なんか引っかかるような、もやもやした感じがして。


「お嬢様?どうなさいましたお嬢様?
もしや、私の風邪が移って……」


「だ、大丈夫!!
フル元気ですので!!」


「そうですか?でもちゃんと熱があるか確かめないと……」


「結構です!!」


おでこを合わせようとしてくる手を押しのけ、熱くなる頬を冷ます。


「残念です」


「なにがですかっ!!」


「熱を測るふりして、あわよくばキスできちゃう距離ですから」


「なっ、ななっ!!」


人差し指を唇に当て、クスリと微笑む。


十夜さん、完全復活。


「なんて冗談はさておき。お詫びと言っちゃなんですが、私と出かけませんか?」


「え?十夜さんと?」


「はい。私を手取り足取り看病して下さったお礼です」


「ちょっ、変な言い方しないでください!!」


なんて慌てる私を見る目が、どこか違う。


熱っぽい?


ううん。


なんだろう、なんか……

愛おしいと叫んでいるような。


風邪が完治したのはいいものの、十夜さんの私に対する接し方が格段に甘くなっているようで、ドキドキがとまらない。