お嬢様、今夜も溺愛いたします。


でも私は……


「ごめんなさい。気持ちはとても嬉しいですけど、このクッキーは渡せません」


「えっ」


頭を下げてはっきり告げる。


「命の恩人、私にとってこれ以上にないくらい大切な人のために作ったものなんです。だから、ごめんなさい」


からかわれたり、時にはいじわるだったり。

それでも根は優しくて、本当はいつも私のことを再優先してくれる人。


そして今、私が意識してやまない人。


「わ、かりました……」


諦めてくれた?


「それならそれでいいです。
でも……」


「えっ」


顔を上げた途端。

その近さに息を呑んだ。


「一つだけ。
一つでいいから、もらえない?」


ちょっと待って。

急にキャラ変わってない?


さっきまでのアタフタした雰囲気が一変して、どこか鋭い眼差しで私との距離を詰めてくる。