お嬢様、今夜も溺愛いたします。



着いた場所はバラ園の傍にある噴水の近く。


「あの?それで、話って……」


背を向けたまま黙りこくるその人に問いかける。



「あのっ!!」


「はい」


「ぼ、僕隣のクラスの林って言います!」


やっとこっちを振り返ったその人は林くんと言うらしい。

さっきからずっと顔はりんごのように真っ赤だし、体調が悪いのかと思ってしまう。


「あ、あのっ、急にこんなこと言われても困るって分かってるんですけど……そ、そのクッキー僕にくれませんかっ!」


「えっ?」


林くんがじっと見つめる先は、私の肩にかかったカバン。


クッキーって、今日家庭科で作ったクッキーのことだよね?



「ぼ、僕村上さんを始めて見た時からずっと好きで!で、でも僕なんかが振り向いてもらえないのは分かってます。だ、だからそのクッキーをもらえたら、本当に諦めますのでっ……」


え、林くんは私のことが好きで、

でも私が好きになることはないから、諦める代わりにクッキーをくれって言ってるってこと?


そういや教室でも、お嬢様たちに男子がちょうだいよーって群がってるの見たっけ。