お嬢様、今夜も溺愛いたします。


振り返ると、そこにいたのは1人の男子生徒。


ネクタイはキチッとしめていて、メガネをかけている。

黒髪で、どこか理知的なオーラが感じられるその人。


同じクラス……ではなさそう。

こんな人、確かいなかった。


「えーと、私に何か用ですか?」


早く帰りたいなぁと思いつつも、表情には出さず問いかけた。


「ちょっと話があって……」


「話?私今、急いでいて……」


見れば教室を見回し、モジモジとしている。

何かここでは話しにくいことなんだろうか?


まだたくさん人残ってるし。


「す、少しでいいので、お願いします!」



なぜか顔を赤くしたその人は、早足で歩き出す。


「あっ、ちょっと!」


引き止めたにも関わらず、振り返ることなく歩いていくその人。


早く帰りたいんだけどなぁ……


そう思いながらもさっさと終わらせようと着いていくことにした。