「ほら。ちゃんと考えて下さい」
「そ、そうは言ったって……っ!」
不機嫌な声に頭をフル回転するけれど、頬に、こめかみに、おでこにと熱が落とされるせいで、全身の力が抜けていくばかり。
「先程も今のように薄明かりの下で、とろんとした目をされて。私がなんの手を出さないとでもお思いですか」
そして私の肩からするりとカーディガンを抜き取っていく。
「黒、木さ……」
抵抗しようとしても、頭がぼんやりとして手足が動かない。
それどころか、鋭い目の中にとんでもない熱っぽさがあって、不思議と目を逸らすことができない。
「このままお嬢様の望んだ通りにしてもよろしいのですが、もちろんそうはしませんよ?」
「えっ?」
「どうして私がお嬢様を今夜へと意識を引いたのか、ちゃんと理解していただかなくては」
「で、でも本当に、身に覚えがなくて……」
嫉妬。
つまり私のことで黒木さんは誰かにそう思った。
でも私は本当になにも……
「お嬢様の鈍感っぷりは、私を翻弄……いや、誘惑しているのではないかと常々思えてなりません」



