涙に逢うまでさようなら

翌日、わたしは店で自身の右手首を眺めていた。

昨日の別れ際、みいぽんさんが「藤城さんへ、よかったら」と綺麗なヘアゴムをくれたのだ。

デザインはちいたんさんがわたしをイメージして考えてくれたらしい。

使うのはもったいなく感じた上、自分の髪の毛に縛るほどの長さもないため、ヘアゴムには空いている右手首を飾ってもらっている。

焦げ茶色のリングゴムにレジンで作られた、グラデーションがかかった紫色の円形の飾りがついている。

飾りの中には、細かいラメとともに散りばめられた五つの金色の星が閉じ込められている。


なっちがくしゃみをした直後、車のドアが閉められる音がし、犬の声と「タロくんおつかれえ」という聞き覚えのある声が聞こえてきた。

看板の文字と花を彫ってもらうため、彫刻や版画の得意なミントさんを呼んだのだ。

「来たな、犬大好き女」

「なっち言い方。しょうがないよ、実際タロくんかわいいんだし」

「あとの掃除が大変じゃん」と言うなっちを無視し、「おつかれさまですミントさん」と出入り口へ駆け寄る。

「ごめんなさいね、社長。遅くなっちゃって」

「いえいえ。こちらこそお忙しい中お呼び立てしてすみません」

わたしが頭を下げると、ミントさんは「とんでもない」と両手のひらを肩の辺りで上に向けた。

「こっちはタロくんの入店を許してくれればなんだってお手伝いしますわよお」

ねえタロくん、とミントさんは愛犬を撫で回した。