涙に逢うまでさようなら

「ううん……。でもやっぱり花の方がかわいいかなあ……」

なっちの言葉に、「うちもそう思う」とちいたんさんも頷いた。

「社長さんはどう思う?」

ちいたんさんに意見を求められ、「どちらかと言えば……花、ですかね」と頼りなく答える。

「社長さん、だめよ? ちゃんと自分の意見持っとかないと。決断力もね。持ってこられたものを断るっていう強い部分もないと」

「ああ、そうですね……」

はははと苦笑を続け、わたしなんて自分の意見と決断力、強さの塊なのだがと思う。

なにせこの経歴に加え、座右の銘は使えるものは使うだ。


「じゃあ季節に合った花を彫るとして、どの花にする? それぞれ」

ちいたんさんが言った。

「春の花と言えば、やっぱりわたしは桜のイメージがあります」

「あら、社長さんからちょっとずれちゃった。うちチューリップ」

「では、花言葉もいいオオイヌノフグリなんかはどうでしょう? 忠実、信頼などが花言葉です。会社に必要なものではないでしょうか?」

みいぽんさんが言った。

「あのねえ」となっちが普段以上に低い声を出す。

「マイナーなのを提案するんでないよ。小さな水色の花ってのは知ってるけど、看板に描かれたそれを見て

『あっ、看板のあれオオイヌノフグリだ。忠実とか信頼って花言葉なんだよね』とか思う人がいると思う?」

なっちの語りを、「まあまあ、みいぽんは博識だから」とちいたんさんがなだめる。

「じゃあななちゃん、カモミールはどう?」

「却下。名前は聞いたことあるけどお姿が浮かばない」

「じゃあ、やっぱり春は桜でいいんじゃない? 多くの人が春の花と言えば桜を浮かべると思う」

わたしが言うと、ちいたんさんは「そうだね。社長さんが言うんだからそうしよう」と頷いた。

「ななたんも、社長さんの言うことだからね?」と続ける。