授業中は勉強に没頭し、休み時間はなっちとともに想像の雑貨屋を形にし、土日は学問と闘う大翔とともに苦手な縫い物と闘う。
授業には少しでも遅れようものなら卒業できないくらいの気持ちで挑み、
たった十分の休み時間は雑貨屋に費やし、
二日間の休日は手芸に費やすとなるとなかなか厳しい毎日のようにも思えるが、高認の勉強をしていた初めの頃の方がわたしには厳しい毎日であった。
大翔の言葉で一度学問を忘れたあとの勉強は最初ほど辛くはなかったが、それと比べても今の方が心身ともに楽だ。
恐らく、授業内容も雑貨屋のことも土日の手芸も、どれも好きなことであるからだろう。
刺繍は唯一、好きかと訊かれた場合に迷わず頷けるほどではないが、上手ければ雑貨屋に並ぶ品の数が増えることは確かであり、好きなことに関係している。
縫い針で指を刺すことはほとんどなくなった。
時々針の先に触れることはあるが、絆創膏を要するほどの勢いではない。
わたしが布に下描きをしていると、後ろで大翔が深く呼吸をした。
振り返りながら「どうした?」と尋ねると、「なんでもない」と返ってきた。
その声色は、なにかを隠しているようなものではなかった。
「そうか」と頷き作業に戻ると、「ただ、今回を最後にしようと思って」と続けられた。
手を止め、もう一度振り返る。
わたしと目が合うと、大翔は「大学。受験」と付け加えた。
「……そうか。大翔がいいなら、全然いいと思う」
表情に不安の色を覗かせる大翔に、「違う違う」と笑って手を振る。
「自分の人生だよ? 他人にうじゃうじゃ言われることじゃないよって。後悔しない道を自分で選びなってこと」
わたしが自分の言葉を解説すると、大翔は微かに笑みを浮かべた。
「やっぱり美紗だね」
「ん?」
「ちょっと思ってたんだ。美紗、逢った頃から変わったなあって。だけど、やっぱり美紗は美紗だった」
「ああ、確かに変わったよね。自分でも気づいてる。こんな温厚な自分初めてだよ。前がおかしかったのかもしれないけど」
最近はいろいろと自然になってきた、とわたしは笑った。
授業には少しでも遅れようものなら卒業できないくらいの気持ちで挑み、
たった十分の休み時間は雑貨屋に費やし、
二日間の休日は手芸に費やすとなるとなかなか厳しい毎日のようにも思えるが、高認の勉強をしていた初めの頃の方がわたしには厳しい毎日であった。
大翔の言葉で一度学問を忘れたあとの勉強は最初ほど辛くはなかったが、それと比べても今の方が心身ともに楽だ。
恐らく、授業内容も雑貨屋のことも土日の手芸も、どれも好きなことであるからだろう。
刺繍は唯一、好きかと訊かれた場合に迷わず頷けるほどではないが、上手ければ雑貨屋に並ぶ品の数が増えることは確かであり、好きなことに関係している。
縫い針で指を刺すことはほとんどなくなった。
時々針の先に触れることはあるが、絆創膏を要するほどの勢いではない。
わたしが布に下描きをしていると、後ろで大翔が深く呼吸をした。
振り返りながら「どうした?」と尋ねると、「なんでもない」と返ってきた。
その声色は、なにかを隠しているようなものではなかった。
「そうか」と頷き作業に戻ると、「ただ、今回を最後にしようと思って」と続けられた。
手を止め、もう一度振り返る。
わたしと目が合うと、大翔は「大学。受験」と付け加えた。
「……そうか。大翔がいいなら、全然いいと思う」
表情に不安の色を覗かせる大翔に、「違う違う」と笑って手を振る。
「自分の人生だよ? 他人にうじゃうじゃ言われることじゃないよって。後悔しない道を自分で選びなってこと」
わたしが自分の言葉を解説すると、大翔は微かに笑みを浮かべた。
「やっぱり美紗だね」
「ん?」
「ちょっと思ってたんだ。美紗、逢った頃から変わったなあって。だけど、やっぱり美紗は美紗だった」
「ああ、確かに変わったよね。自分でも気づいてる。こんな温厚な自分初めてだよ。前がおかしかったのかもしれないけど」
最近はいろいろと自然になってきた、とわたしは笑った。



