涙に逢うまでさようなら

二年生になってから描き始めた絵を完成させ、なっちにノートを渡した。

それを受け取りわたしの絵を見た彼女は、大きな遊園地に初めて訪れた子供のように目を輝かせた。

「みさっちすごい。みさっち、絵上手なんだね」

「絵を描くことの楽しさに気づいたら、少し上手くなった気がする。高一の頃、授業中にノートの隅に女の子の絵を描いたのがきっかけ」

「へええ。どんな女の子を描いたの?」

ノートを眺めながら放たれた問いに、「ショートボブの、白いワンピースを着て麦わら帽子を被った子。ひまわり畑の中でしゃぼん玉を吹かせた」と答える。

「そうなんだあ。ええ、とにかくみさっちすごい」

「やめてよ、照れるじゃん」

「さては君、おだてに弱いタイプだな?」

なっちは上目遣いにわたしを見ながら言い、ノートのページをめくった。

視線をそちらに戻した直後、切れ長の目を大きくした。

「みさっち、これすごい。これいいよ」

綺麗な低音で叫ぶように言うと、ノートをこちらへ向け、左側のページを人差し指で示す。

そのページに描いてあるのは、前回の絵だった。

木や茶色を基調とした、温かみのある喫茶店のような雰囲気の店内を残したものだ。

「この感じにしなよっ。絶対、絶対お客さんいっぱい来るよ」

普段の落ち着いた様子とはかけ離れたなっちの姿に戸惑いながら、「そんなに?」と返す。

「これは絶対いいよ。ここはレジでしょ? そのそばにあるカウンター席みたいなのはなにスペース?」

「ああ。雑貨屋って言っても、手作りしたものを売る店にしたいと思ってて。

で、そのレジ横で、手先が器用でかつ愛嬌とコミュニケーション力のある方に商品を作っていてもらおうかなって思ったの」

「へええ。そりゃあいい」

「『これ、今度の新作なんです。表に並んだら、ぜひよろしくお願いします』みたいなことを上手く言ってもらったりすれば、新作の予告になると思ってね」

「へええ。みさっちすごいね。計算高い」

昼休み終了を告げるチャイムを聞きながら「言葉を選んでくれ」と苦笑した。

スティックパンの袋を折り、ノートを閉じてシャーペンと消しゴムをペンケースへ戻す。