涙に逢うまでさようなら

大翔が解散を口に出すまで勉強を続けると、内容が身についた気は一切せず、代わりによからぬものに取り憑かれたかのような倦怠感に襲われた。

昼間にコンビニで購入した清涼菓子の容器を振ると、二粒転がってきただけで静かになった。

「まじかよ」と本音をこぼすと、「美紗、ポテチみたいな勢いで食べ続けてたからね」と大翔の声が聞こえた。

今度はその言葉に対し「まじかよ」と発し、彼が帰りの準備をしている間に二つ目の清涼菓子の包を開けた。

大翔はよっこいしょという掛け声とともにショルダーバッグを斜めに掛ける。

「ところで美紗、そういうのってそんなに食べて平気なの?」

「さあね。今までは特になにも起こらなかったけど?」

食うか、と容器を差し出すと、大翔は目を大きくし、震わせるように首を振った。

わたしはその容器を振って出てきた五粒ほどを口に放る。

ため息にも似た息を吐くと、大翔は直後に息を吸い込み、「幸せが逃げてしまうではないか」と言った。

「今のはため息ではない。深呼吸だ」

「あれじゃあ同じようなもんだよ」

「はいはい。以後気をつけますとも」


自動ドアをくぐると、わたしたちを沈黙ごと暑苦しい空気が包んだ。

大翔と同時に「あっついなあ」とこぼし、パーカーのフードを被った。

「大翔いつも被ってるっけ?」と問うと、「美紗の真似」と幼い子供のような笑顔が返ってきた。