涙に逢うまでさようなら

翌日、公園や図書館のある通りを歩いていると、後ろから名前を呼ばれた。

振り返ると、檸檬色のパーカーを着た大翔が数メートル先にいた。

笑顔で手を振る彼に、軽く右手を上げる。


「おつかれ」

大翔は笑顔のまま、わたしのすぐそばへ来たときに言った。

わたしは特に表情は作らず、「おつかれ」と返す。

歩みを止めない彼についていくように、わたしは歩みを再開した。

「今日は黒なんだね」

なんのことだと聞き返そうとしたが、意味はすぐにわかった。

「ああ」と返したあと、「あのパーカーは二度と着ないと誓ったよ」と続ける。

大翔は小さく噴き出したあと、「そっかそっか」と笑顔で言った。

なにが面白いのだと心の中で漏らす。

「不幸を連れてくる服なんて着たくないよね」

「まあね」

「それでいいと思うよ。あの色、美紗らしいとも思えないし」

まあ気に入っているのであれば着たらいいと思うけど、実際のところそうではないようだしね、と大翔は続けた。