「待ってください」


その空気を変えるため、声を張り上げた。
今、戦争が始まればきっと勝機はない。
今は耐える時。
態勢を整えて万全にして、それからでないと。

でも、そうするための時間は残されていない。
でも一つだけ、残された道がある。


「最後の交渉を受けます」

「ほう」

「最後の?どういうことですか、リズさま」


キースさんの声に振り返り、微笑んでみせる。
護る。
護って見せるから。


「私が、ゼルダ様の王妃としてコールド王国へむかいます」

「はっ!? リズさま!」

「身も心も、捧げる。その覚悟があるのだな」

「はい」


見栄を張る。
覚悟なんてない。
私が身も心も捧げたい人は一人だけ。
アルさまお一人だ。

でも、アルさまの大切な場所を護るためならいくらでも演技をしよう。
身も心も捧げたふりをして。
そして、時を待つ。
刃を振りかざし、貴方の胸に突き立てられる時を。