当時の俺は勉強はそこそこにできても心臓病についての知識はほとんどなくて。美憂の持っていた薬さえ飲んでいれば、きっと大丈夫なのだろうと思っていた。


浅はかだったと思う。

治るのならば美憂が病気のことを隠す必要はなかったし、薬を飲んで大丈夫だったならば、ごめんなさいと謝ることもなかったというのに。


俺はきっと、現実から目を背けたかったんだ。

美憂が深刻な病気を抱えていると、信じたくなくて。


なぜ神様は美憂を病気にしたのだろう。

世の中には、腐るほど悪いヤツがいるっていうのに、どうして彼女だったのだろうか。


『千紘くん。約束して』

美憂と交わした最後の言葉が耳から離れない。