じわりじわりと水紋(すいもん)のように広がっていく記憶。

学校を終えた俺は、コンクリートに滲む雨の上を歩いていた。ちょうど中三の春に美憂の病気のことを知った道にたどり着いて、少しだけ足を止める。


雨は絶え間なく雨水桝へと流れていくのに、あの時の美憂の涙や悲しい顔だけは俺の中から流れていかない。


美憂の心臓病は先天性だった。


考えてみれば、美憂は体育の授業などの激しい運動の時はいつも見学していた。


運動音痴なんだよねと笑って、バレーやバスケの室内の時だって、ボールが回ってこないポジションを自ら好んで立っているだけ。

だから本当はもう少し早く気づけたはずだっのだ。


俺は美憂の彼氏で、一緒にいる時間が長かったんだから本当は……気づいてあげるべきだった。


それが一年経った今でも悔いていることだけど、実はもっと後悔していることがある。


美憂に打ち明けられたあと、俺はバカみたいなことを聞いてしまったのだ。

――『でも治療すれば治るんでしょ?』と。