「お待たせ」
カップをふたつ並べたあと、ティーポットを中央に置く。
「茶葉いれたばっかりだから、もう少し待ってね」
再び同じ場所に座ろうとする美憂の手を俺は掴んだ。
「千紘くん……?」
「ねえ、美憂。これなに?」
俺は美憂のものであろうケースを見せる。
美憂は嘘が大嫌いな性格で、普段から絶対に嘘だけはつかない。それは俺が一番よく知っていたのに……。
「サ、サプリメントだよ」
美憂ははじめて俺に嘘をついた。
本当に下手くそな嘘。しどろもどろだし、なにより俺の目を見ようとしない。
「美憂」
諭すように、名前を呼んだ。
美憂はやっぱり俺の目を見ない。そして「……ごめんっ」と、慌てて部屋を飛び出していく。
「美憂……!」
俺はすぐに追いかけた。
外は篠突く雨だった。傘も差さずにバシャバシャという水たまりを蹴る音だけが響く。
「ハア……美憂っ……!!」
追いついた俺は、その手を掴んだ。
雨で冷えてしまったんだろうか。美憂の体温がすごく冷たい。



