きみとなら、雨に濡れたい




「たぶんすぐ止みそうだけど、分かんないね。傘差しながらサイクリングはできないし、今日は中止にしようか」

「だね」


美憂はひょいっと甘えるように俺の傘に入ってきた。「へへ」と笑いながら腕を組んできて、ぴたりと身体を寄せる。


去年の6月から付き合いはじめた俺たちは今月で10か月記念日を迎えた。


最初は『小暮と高木さんなんて不釣り合いだ!』と散々周りから言われていた。

けれどそんなことは俺が一番分かっていることだったし、なにより美憂が学校でも『千紘くん』とくっついてくるので、彼女を狙っていた人たちは青ざめたように諦めるしかなかったようだ。


「そういえば千紘くん、また背伸びたでしょ?」

「そう言う美憂は縮んだ?」
  
「身体測定では一センチ伸びてたもん!」


身長は相変わらず小柄な美憂だけど学年が三年生になると、美憂は可愛いというより綺麗になった。


「また同じクラスでよかったよね」

「3年間一緒とか、けっこうすごいよな」

「私が神様に頼んだおかげかな」


家まで続くあぜ道の途中で角田のおっちゃんが運転する軽トラックとすれ違った。

プッと一回クラクションを鳴らされて美憂は慣れたように「こんにちは」と挨拶をする。

     
ここら辺の近所の人は大体、美憂のことを知っている。

俺の彼女と認識しているかどうかは分からないけれど、知り合いに会うと気まずかった雰囲気も、今では堂々とできるようになった。