菅野の挑発にムカついたとしても、あの場は『違う』と言うべきだった。
言うと思った、小暮は絶対に。
「みんなに言いふらすって言ってた。菅野はやるよ。そういうヤツだもん」
もうすでに誰かに言ってるかもしれない。別にカップルなんて珍しくないけれど、私と小暮という組み合わせがよくない。意外すぎる者同士は、格好のネタにされるだけ。
「あー。まあ、俺は別にいいけど……」
「よくないよ!」
珍しく声を張ってしまった。
私と小暮?冗談じゃない。
私がイヤなんじゃない。私だって勘違いされても、噂されても別にいい。
だけど、だけど……。
「美憂は嫌がるよ、きっと」
ぽつりと、前髪から同時に滴が垂れた。
――美憂。小暮の前ではじめて呼んだ。
もう気づいてるんでしょ?
ただのクラスメートの女子なら、小暮はここまで親切にしない。
私を助けたのも家に連れてきたのも、私が美憂と無関係じゃないからでしょ?
「……美憂は私の双子の姉だよ」
言いながら、声が詰まった。



