「コイツ本当にムカつくヤツでさー。このすかした顔見てると殴りたくなるんだよな」
菅野はまるで他校の男たちに自分がどれだけ強いかを見せつけているような態度だった。
「じゃあ、やれば」
私はギロリと睨む。
「いつも威勢だけのくせに」
そう吐き捨てると、菅野がグイッと私の胸ぐらを掴んだ。
イライラする、なにもかも。菅野の汚い顔も薄笑いを浮かべている男たちも、降り続けている雨にさえ、沸々と感情がこみ上げてくる。
「あんまり俺をなめるなよ、柴田」
「ボールを当てられただけでいつまでも根に持ってる小さい男なんて、なめられて当然でしょ?」
私の言葉に、どっと吹き出す男たち。「言い負けてんじゃん」と、からかわれて菅野の顔がみるみる赤くなっていく。
菅野はギリッと掴んでいる手を強くした。
「お前さ、裏で自分がなんて言われてるか知ってんの?」
負け惜しみのように菅野の口がペラペラと動いた。
「柴田は生まれた時に付けてくるもんを落としてきたって。本当は女のふりした男だって、みんな言ってるぜ」
別にどうってことはない。自分が一番分かってることだし、こんなことで私は怯まない――と、次の瞬間。
「胸もねーしさ」
菅野にガシッと胸を触られて、ぞわりと悪寒が走った。
「……っ」
思わず仰け反ってしまい、手に持っていた傘が地面に吸い寄せられるように落ちていく。
「ぷ、はは。なにその反応」
余裕がなくなった私を見て菅野の高笑いが響いた。



