きみとなら、雨に濡れたい




いつの間にか公園には雨が降り注いでいた。念のためにと持ってきた傘が役に立ちそうだ。


「ねえ、和香ちゃん」

そんな雨音を聞きながら美憂の唇がゆっくりと動く。



「水飴症候群って知ってる?」


「え?もう一回言って」

「ドロップシンドローム」

私は「なにそれ」と、受け流す。すると宿題をやっていた美憂の手が止まった。


「この町の言い伝え」

そう言われて私もシャーペンを止める。美憂はこの手の話に詳しい。都市伝説の番組は必ず録画してまで見てるけど、私はあまり興味がない。

「こんな田舎町に言い伝えなんてないでしょ」と鼻で笑うと「あるの!」と強く言い返されてしまった。


「大昔にね、ちっとも雨が降らない大干ばつがあったの。食料不足でみんな途方に暮れているところにひとりの女の子が神様に自分の身を捧げる代わりに雨を降らそうとしたんだ」

「それで雨が降りましたって話?」

「違うよ。雨はたしかに降ったんだけどね、それは残された妹が姉を想って流した涙だったんだって」 

「ふーん」

「そんなに強い絆で結ばれた姉妹なんて、憧れちゃうよね」


私はなにも答えなかった。


ただの言い伝えをあたかも本当のことのように話す美憂に呆れていたこともそうだけど。

妹が姉を想って流した涙が綺麗な理由じゃないかもしれないじゃない。


本当は身を捧げるほど心優しい姉に、嫉妬していたかもしれない。


そんな風に考えてしまう私はやっぱり、天使のような美憂にはなれないのだ。