『お母さんに頼めばよかったのに』

お母さんはお菓子作りが得意だったし、美憂が苦戦して作らなくてもひと言頼めばお店のようなクッキーを焼いてくれると思うけど。


『お母さんがいなくても、なんでも自分でやりたいの』

美憂は『へへ』と笑った。


それから何度も失敗を繰り返して、やっと成功したのは4回目だった。冷蔵庫にあった卵が全部なくなったのは置いておくとして。

『次は動物の形にしてみたい!』と、美憂が言うもんだから、さすがに私は別の日にしようと言った。とりあえず練習するために動物を紙に描いてみることになり……。


『はは、和香ちゃん下手くそ』

私のキリンを見て美憂が爆笑していた。


『そういう美憂もヒドいからね』

ウサギをここまで崩して描けるのはある意味才能かもしれない。

私たちは小さい頃から絵心がなかった。もちろん真剣にやってるのに必ず周りから笑われた記憶がある。


『和香ちゃん、パンダ描いて』

『えーパンダ?』

直接見たことがないパンダをとりあえず描いてみた。


『パンダって髭あるの?』

『あるでしょ。ネコ科だし』

美憂は『じゃあ、参考にする!』と言って、私の描いたパンダを何度も練習していた。