柴田は男っぽい印象しかなかったから、手際よく薄力粉を捏ねているとヘンな感じがする。

「なに?」

手元を見すぎていたら柴田に睨まれた。


「べつに……」

「アンタはサランラップ持ってきて」


男子が暇にならないように役割は与えてもらったけれど、やっぱりあまりやることはなかった。

生地を冷蔵庫で寝かせたあとは、好きなように型どりをすることになった。銀色の型は用意されていたけど、まるや四角と基本的なものばかり。

型どりもまた女子が中心になって、柴田は型を使わずになにやら自分で形作っていた。


クッキーは授業が終わる15分前に完成した。

出来上がったグループから試食していいことになっていて、俺たちも出来上がりのクッキーを食べることになった。


漂ってくる香ばしい匂い。やっぱり頭には美憂が浮かぶ。


クッキーの数には限りがあるので均等に配分されて、俺の元にきたクッキーは5枚。ひとつを手に取って食べようとすると……。


「あ……」

小さな声が自分から漏れた。

それは目元が黒くなっている犬の形をしたクッキー。


正面に座っている柴田と目が合って、恥ずかしそうに逸らされた。

そんな顔しなくたって、お前が作ったものだって分かるよ。それで、犬じゃなくてパンダなんだろ。


……なんなんだよ、本当に。


俺は胸が締め付けられながらクッキーをひと口たべた。


それは、美憂と同じ味だった。