きみとなら、雨に濡れたい




「どう?」

美憂はクッキーを食べる俺を食い入るように見ていた。まだ熱が冷めていないクッキーを食べたのは初めてだった。


「美味しいよ」

「本当?」

美憂が安心したように胸を撫で下ろす。


「これ犬?」

俺は二枚の動物クッキーに手を伸ばした。


「違うよ、パンダ!」

「……パンダ」

たしかに目の回りが黒いけれど、パンダにはあまり見えない。


「パンダって髭あったっけ?」

「え、ないの?」

「うーん、たぶん」

そんなやり取りをしながら、残ったクッキーは美憂がサランラップをかけてくれて「おばあちゃんと食べてね」て、すべて置いていってくれることになった。


美憂はすごく礼儀正しい。最近物忘れが多くなったばあちゃんにも必ず声をかけるし、俺の両親の仏壇に飾る花を持ってきたりしてくれる。

モテるはずだ。個人的にはあまり人気者にはなってほしくないんだけど。


「実は家族以外の人にクッキーを食べてもらったのは初めてだったんだ」

「そうなの?」

「ついでに言うとね、料理は得意じゃないの。だからクッキーもちゃんと作れるようになるまで何回も失敗しちゃった」


美憂は欠点がないように見えるから、とても意外に思えた。もしかして俺のために練習してくれたのかな、なんて自惚れつつ。美憂はベッドを背もたれ代わりに座って膝を抱えた。


「最近ね、ちょっと色々自分でできなきゃダメだなって思って……」


美憂の声のトーンが急に低くなる。それは自分自身を否定しているようにも見えて「美憂は学校で色々やってるじゃん」と、フォローした。