きみとなら、雨に濡れたい




どうして美憂がうちでクッキーを焼いていたかというと数日前に隣のクラスで行われた調理実習の授業がきっかけだった。


作りたてのクッキーをラッピングの袋に包んでソワソワしていた女子生徒たち。どうやらお目当ての男子に渡すようだった。


そんなあちこちで繰り広げられている光景を横目で見つつ、もちろん俺に渡してくる女子はいない。

そんな中でガタッと身を乗り出すように俺の前の席に座ってきたのは美憂だった。


『なんか学校で甘い匂いがするとヘンな感じだよね』

そう言って長い足を交互に組む。


休み時間や昼休みと、美憂は俺と話す時は決まって前の席に座る。そのたびに本当の座り主である男子が心を浮かせていることは知っていた。

自分の席に美憂がいる。たったそれだけのことでドキドキさせてしまう美憂の人気ぶりは相変わらず衰えない。


『千紘くんって、誰かから手作りのお菓子とかもらったことある?』

『ないよ』

『じゃあ、クッキーも?』

『うん』

という流れが先日にあり。今日美憂がうちにクッキー作りをしにきたというわけだ。