きみとなら、雨に濡れたい









学校を出た帰り道。俺はいつもよりも速いスピードで歩く。


空から降りしきる雨は地面へと落ちると、そのまま道路脇にある雨水桝(うすいます)に流れていく。

噂では学校の存続だけじゃなく、町自体がどうやらヤバいらしい。雨水菅を通って運ばれていく雨水の量は利根川ダムの貯水量をいつか越えてしまうんだとか。


そしたら、避難命令とかされるのかな。なんかテレビ中継も来そう。

そうなったら大騒ぎだろうな、なんて、今は考えなくてもいいようなことを、俺はさっきからずっと考えている。


意識的に頭を違う話題にしようとしてるけれど、やっぱりどうしたって、ちらついてしまう柴田の顔。



俺はなにひとつ、柴田を問いたださなかった。

聞かなかったんじゃない。

聞けなかったのだ。


同じ傘を持って、同じシャンプーを使い、同じジュースを好み、美憂が妹にプレゼントすると言って買ったシャーペンを柴田が持っていたというのに。

わざわざ『分かりやすい公式を付箋に書いといたから後で確認して』なんて、親切ぶった理由をつけて誤魔化した。


もう一度言う。俺は聞けなかったんだ。


だって、美憂と柴田が見えない点と点で繋がっているとして。

俺の知らない美憂を柴田がたくさん知っているとして。


美憂が言っていた可愛いけれど素直じゃない妹が柴田だったとして。


そうやって、どんどん新しい記憶になってしまえば、一年前で止めている自分の時間が動いてしまう気がした。


動きたくない。

ずっと、美憂の思い出に浸っていたい。


俺は、最高に臆病者だ。