「……なに?」
どうせシャーペンのこととか、美憂との関係を聞きたいんでしょ。ああ、本当に面倒くさい。
「これ」
小暮が渡してきたのは数学の教科書だった。
「昨日、忘れていったから」
そう言って、私に手渡す。
ノートとペンケースはカバンに入っていたけど、どうやら教科書は持ち帰り忘れたみたいだ……って。なんだか予想と違いすぎて私のほうが戸惑ってしまっている。
「あと、昨日教えてって言ってたとこ。お節介だと思ったけど、分かりやすい公式を付箋に書いといたから後で確認して」
「……え、ああ、うん……」
私は拍子抜けの返事をした。
あれ、待ってよ。こんなはずじゃない。
もっと私に聞くべきことがあるじゃん。それなのに小暮は、なにも聞かずに再び頬杖をついて窓の外に目を向けてしまった。
私に好感を持たせて、すり寄る作戦なのかもしれない。
そんな小細工を使うようには見えないけれど、私の昨日からの心構えを返してほしい。
結局、アイツは1日なにも尋ねてこなかった。
友達でもないので会話もしないし、日直が回ってこない限りは共同作業もない。
なんなの、本当に。
今日は学校が終わるまで、ずっとアイツのことばかりを気にしてしまった。
振り回されてしまうなんて、どうかしてる。



