「なんでこんな場所に……。危ないからどこか店に入って待ってたらよかったのに」

「その待てる店が近所にないでしょ」

「まあ、たしかに」と、お父さんは苦笑い。


「鍵穴が壊れたんだって?」

ポケットから取り出した鍵。お父さんは確かめるように鍵を鍵穴へと入れる。

……ガチャッ。

何故か嘘のように一発で開いてしまった。


私が待っていた時間はなんだったんだろうか。
たしかに私は無愛想だけど鍵穴にまで嫌われることはしていないのに。


「私の時は本当に何回やってもダメだったんだよ」

とりあえず家の中に入った私はぶつぶつとお父さんに訴えた。


「じゃあ、鍵穴じゃなくて和香の持ってる鍵がダメになったのかもな」

「どうしたらいい?」

「俺の鍵を渡すよ。あとでスペアキーは作りに行くとしても明日も開かなかったら困るだろ」


そう言ってお父さんは自分の鍵を私に渡した。

せっかく大家に文句を言おうと思ったのに、鍵ならば私の扱いが乱暴だったのかもしれない。