そして1日の学校が終わり、俺はまた雨の中を歩く。
あちらこちらに出来ている水溜まりを避けることもなく、バシャと飛沫(しぶき)を上げる。
ぽつりぽつりと、細雨(さいう)が傘に当たる音を聞きながら、俺はある場所で足を止めた。
それは昔、美憂と来たことがある公園の前。鉄棒とブランコと滑り台しか遊具はないけれど、ここにもまた紫陽花がたくさん咲いていた。
春は新芽が顔を出して、夏は青紫色の花をつけ、秋は色褪せた落葉低木(らくようていぼく)になり、冬は休眠期間で枝だけになる紫陽花。
美憂は、そんな紫陽花が好きだった。
『千紘くん。紫陽花の花言葉って知ってる?』
町を歩けば、よみがえってくる美憂との思い出。また胸が苦しくなって立ち去ろうとした時。
深紅色の紫陽花の中で見つけた人影。
公園にある屋根付きの東屋に……柴田がいた。
柴田は木製の椅子に座って、なにやらテーブルでなにかを書いている。
そっと右耳に髪の毛をかける仕草は、一瞬だけショートカットになった美憂がいるのではないかと錯覚してしまった。
……疲れてんのかな、なんて目を擦りながら。俺は自然と柴田がいるほうに寄っていく。
東屋は丸い柱で組み立てられていて、形は八角形。
とんがり屋根が特徴的で、美憂は可愛らしく『メリーゴーランド』って呼んでいた。



