「ほら、次が詰まってるから早く自分の名前を書きなさい」

急かされるように言われて、私はしぶしぶ小暮の隣に柴田と書いた。


そのあと全員の席が決まり、私も荷物を持って移動する。元々窓際の列にいた小暮はただひとつ前の席になっただけのようで、すでに移動し終わっていた。

みんな自己紹介がてら「よろしくね」と、隣の人に挨拶をしてるけれど、私は目を合わさずにそのまま座った。


2限目の授業は英語だった。まだ慣れない席に戸惑いながら、私は机の中から教科書を探す。

……あれ。いくら見つけても英語の教科書がどこにもない。そういえば課題をやるために家に持ち帰って、そのまま置いてきてしまった気がする。


「柴田さん、教科書はどうしました?」

目ざとく先生に見つかってしまった。


「忘れました」

「それなら隣の人に見せてもらってください。じゃあ、授業はじめますよ。ページは……」と、先生の声が響く中で、私はまたしても固まっていた。

……隣って言われても。


すると、まだ頼んでいないのに小暮から席を近づけてきて間に教科書を置いてくれた。

お礼を言う前に10分間のリスニングが始まってしまったからタイミングを逃してしまった。


それからも落ち着かない授業が進んで、本当にピタリと小暮が机をくっつけるから距離が近い。

でも私は動揺を表には出さなかった。