きみとなら、雨に濡れたい




そして学校が終わり、私は帰る準備をはじめた。

普段、昇降口の傘立ては使わない。あんな乱雑な場所に大事な傘なんて置いたらすぐに壊されてしまうから。

でも今日の私は安いコンビニのビニール傘。スッと一本手にとって、ローファーを履いた。


ぼと、ぼとっと雨粒が透明の傘に当たっては滴り落ちていく。


学校から家までの時間は徒歩で15分ほど。抜かるんだ地面を歩きながら、私はいつも同じところで足を止める。

それは真っ赤に色づいた紫陽花の前。


まるで暗闇を照らすような明るい色は無条件であの子と重なる。


もし、この雨があの子が言っていた話のとおりなら、この雨は――私のせいかもしれない。


胸に押し寄せてくるイヤな感情。

私は紫陽花から目を逸らして、再び逃げるように足を速めた。


私の家は築50年の古いアパート。2階へと続く階段は錆び付いていて、【201】と消えそうな文字で書かれたドアの前に立つ。

濡れた傘を窓の格子に引っかけて私は鍵を鍵穴へと入れた。


……ガチャガチャ。


最近鍵穴は一回で回らないことが多い。鍵が歪んでいるのか、それとも鍵穴も錆びてきているのかは分からない。

本当は直してほしいけど、ここの大家は壊れてからじゃないと動かない人だから、あまりあてにはしていない。