きみとなら、雨に濡れたい



私は昔からどこかねじ曲がった性格をしていた。

みんなが楽しく騒げば騒ぐほど大人しくなり、みんなが悲しめば悲しむほど、涙が引っ込んでいくようなタイプだった。

苦手なのだ。みんなが笑っているから楽しいでしょ?みんなが泣いているから悲しいでしょ?っていう、あの空気が。


だから、私は久しく泣いていない。

自分が世話をしていたウサギが死んだ時も、よく見かけていた猫が轢かれていた時も。

〝あの子〟が旅立った時でさえ、私は涙を流さなかった。



「おい」

パソコンの授業が終わって教室に戻る途中。でかい図体の男がわざと私の通行を邪魔するように前に立った。


「お前、この傷どうしてくれんの?慰謝料払えよ」


それは私が当てたバスケットボールの痕跡がまだ残る菅野だった。

顔面というより鼻に直撃したボールは、あのあと鼻血まで出たらしい。

そんなにコントロールよく当たるなんて自分でもビックリだ。


「なにか言えよ、柴田」 


菅野は制服のズボンを腰まで下げて、クチャクチャとガムを噛みながら高圧的に私を見下ろしている。

こういう不良ぶってるヤツは嫌いだ。それと、こうやって女を見下してるような態度も。