私たちはいまだに菅野が流した噂のより付き合ってることになっていた。
この一年間で否定できるタイミングはいくつかあった。
でもお互いにしなかった。まあ、いいか、とズルズルと無視してしまっていたのだ。
「ねえ、柴田さん」
一限目が終わって休み時間。クラスメートの女子に声をかけられた。
「英語のノートの提出がまだなんだけど……」
なんだか見に覚えのあるやり取り。提出物は基本的に忘れてしまう。やる気がないわけじゃない。家に帰って晩ごはんの献立を考えてる内に頭から抜けてしまうのだ。
でも、最近はずいぶんとそれが減った。理由は……。
「昨日やってたじゃん。もしかして家に忘れてきたの?」
私と女子の会話に割り込んできたのは小暮だった。
「……忘れてきてないよ」
ただ昨日、一緒に教えてもらいながらやった課題を小暮の前で提出するのが少し恥ずかしく感じてしまっただけ。
私は渋々カバンから出したノートを「はい」と、女子に渡した。そして続くように、「遅れてごめんね」と言う言葉が自然と出ていた。
「ううん。大丈夫。ありがとう」
女子が笑って、私の席を離れていく。
雨がやんで周りの環境も変わったけれど、私のコミュニケーション能力も少しずつ変化していた。