「あ……」


柴田が声を上げたあと、差していた傘をそっと下ろした。


ずっと分厚く覆われていた雲が東の方角へと流れていき、灰色だった町に光が射す。


俺は傘を閉じた。身体は濡れない。その代わりに、美憂の笑顔みたいな太陽が俺たちを照らしはじめた。


「雨、上がったね」

柴田が潤んだ瞳で空を見上げた。


美憂は今も俺たちの傍にいる。

そして、ひとりじゃダメだったことも、柴田となら、なんでもできそうな気がしてくる。


俺は自然と柴田の手を握っていた。

驚いたような顔をしていたけれど、手は振り払われない。むしろ、不器用にぎゅっと強く握り返してきたのは柴田のほう。


「虹だ」

雨上がりの町にかけられた七色の架け橋。


あの虹は、きっと希望に溢れた未来へと続いている。